トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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セントジュルジにようこそ!

カルパチア山脈の曲がり角に位置する小さな町、セントジュルジ。
人口はおよそ7万人。英語にすると、キリスト教の聖人ジョージが町の由来となっている。
歴史的、文化的には、セーケイ地方の中心地として大切な拠点であった。この知られざる町の見所を観光気分でご紹介したいと思う。

まずセントジュルジの町の中心に位置する公園から出発したい。
夏には緑の屋根ですっぽりと覆われ、冬には一面雪景色となるこの公園は、市民の憩いの場である。ふだんは静かなこの公園も、4月の終わりから5月の初めに毎年開催されるセントジュルジ祭りでは大変な賑わいを見せることは以前ご紹介したとおり。
公園の入り口には、男爵ミコー・イムレの像が立っている。町の教育の中心であるミコー高等学校は、彼が自分の財産を投じて建てたものである。今も、町のシンボルとして市民を見守っている。

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公園敷地内には、カトリック教会がある。
この地方は主にプロテスタント派からなるので、昔はプロテスタント教会であったのが、後にカトリックに委ねられた。日曜には、晴れ着を着てミサに向かう人々(主にお年寄り)の姿を見ることができる。

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公園の右向かいにある、黄色い塔の建物は美術館。
古くは18世紀から現代のアーティストの作品まで、主にこのセーケイ地方出身の芸術家のものを見ることができる。特にジャールファーシュ・イェヌーの作品は圧巻である。
殺人を犯した女性が、被害者の遺体の前に呼び出され、遺体から血が流れるのを見て発狂するという、ハンガリー作家アラニ・ヤーノシュの書いた作品をテーマにしたもの。ここに蔵されているはいわば下絵で、完成品はブダペストの王立ギャラリーにあるが、画家は何度もこの難しいテーマに挑戦したという跡がしっかりと見られる。

公園のちょうど正面には、大きなポスターを掲げた県立劇場がある。
冬の期間の主な文化的娯楽の一つが演劇である。劇団は、ハンガリー語とルーマニア語のグループに分けられているのも特徴である。また、民族舞踊団の公演もたびたび行われている。セーケイ地方の踊りに興味がある人はぜひ見て欲しい。

劇場から右に曲がると、本通の一つに出る。
ここでは、町の中でも20世紀初頭のアールヌーヴォー建築が多く見られるところ。
黄色い建物は市役所で、公的な結婚式もここで行われる。レモン色の壁に、白い花模様が可愛らしい。

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こんなアーケードの残っている建物もある。

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通りのウィンドーで見かけた、セーケイの衣装を着たお人形。

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中心部はほとんどが普通のコンクリート道路だが、今でも昔ながらの石畳のある通りも残っている。コンクリートと石畳との境がほらこんな風に・・・。

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町の中心にある唯一のデパート「シュガーシュ(太陽の光)」である。
衣類からパソコン用品、食料品、お土産やまで何でもあり。登りはエスカレーターがあるが、帰りは階段を下りるのにはびっくり。一昔前のデパートといった感じ。

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セントジュルジの像もここに。
ちょっと子供のおもちゃのようだが、ドラゴンを槍で刺す勇敢な聖人をかたどったものだ。

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町のはずれは、悲しくも共産主義時代の産物である高層アパートで埋め尽くされる。
この時代にできた建物はどれも似たり寄ったりなので、どの街も画一的な雰囲気になってしまう。質よりも量が重視された時代だったのだろう・・・。

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屋根がぼこぼことした、珍しい形にふと目を引かれた。
旦那がかつて「切断橋」だった所だと教えてくれた。それでも意味が分からない。よく聞けば、家畜の解体場だという。だから扉は赤いのか・・・

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町の中でも最も活気があるところは中央市場である。
入り口の門の前には、近郊の村からきたジプシーの親子が何かを売っている。見れば採集した、野いちごやハーブ、お花などである。季節の植物をいち早く見つけるのはさすが。近郊の村に住むジプシーたちの生計手段は、主にこうした植物採集であるといわれる。

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大きな屋根の下では、季節の野菜やフルーツが一杯に並んでいる。
冬はあまりの種類の少なさに寂しくなるが、夏は赤や緑や黄色の色とりどりの生鮮食材に思わず足が止まる。今はちょうど、イチゴやさくらんぼ、あんずなどが美味しそう。新じゃがもでてきたようだ。

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ある建物を上に上ると、チーズのコーナーがある。
ショーケースに美味しそうなチーズが並べてあり、チーズ売りが小さなチーズの塊を差し出してくれる。ちゃんと味見をしてから買えるので安心だ。
トランシルヴァニアは羊の飼育が盛んなので、チーズもほとんどが羊の乳を原料とするもの。日本ではあまりなじみがないが、あの羊の独特なにおいに慣れれば美味しい。スモークチーズにフレッシュチーズ、塩漬けにしたもの、珍しいのは羊の睾丸の袋にはいっているものもある。値段は、日本に比べると半値ほどである。

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部屋には、暇そうなワイン売りが眠りかぶっていた。
ワインを買う人はあまりいないのか・・・それでも昼のバーにも人がいるのだから不思議だ。

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20世紀ハンガリーを代表する作曲家といえば、バルトーク・ベーラである。
バルトークは作曲家であると同時に、民俗音楽研究者であった。ハンガリーやその他の民族の古い純粋な旋律を求めて、旅をして回った。ここセントジュルジにも収集活動でやってきたのだろうか。
1927年三月にこの建物に滞在した、とある。

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中央の公園の左側にある通りは、大きな栗の木(実はならない)の並木が美しい。
ここにセーケイ博物館がある。入り口には大きなセーケイの門が立っている。木が端整に彫られ、色もつけられている。セーケイというエスニック・グループが、いかに自分たちの身分を誇りにしてきたかがうかがい知れるようだ。

とんがり屋根の特徴的な建築物は、1902年に当時ハンガリーの有名な建築家コーシュ・カーロイによるものだ。

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彼はセーケイ人ではなかったが、20世紀のトランシルヴァニア史に残る重要な知識人であった。建築家であると同時にイラストレーター、作家、歴史家、政治家として活躍、トランシルヴァニアのハンガリー系住民のために尽力した。
驚くことに、建物の小さなディティールもすべて彼のデザインによるものだ。チューリップの飾りのついた長いすや、鉄の扉に刻み込まれた鳥の形・・・細部まで見ごたえ十分である。当時いかに建築というものが、芸術の一つとしての役割を担っていたかを知ることができる。セーケイ博物館の中についてはまた後日・・・。

博物館の前を過ぎていくと、町の大きな産業であるテキルタル工場が見えてくる。
テキスタルといっても洋服のための布を作るらしい。歴史は古いそうで、150年ほどになるそうだ。ここを通るといつも、酢のような匂いが漂ってくる。

そのさらに奥、同じ通り沿いにタバコ工場もある。

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CARPATI(カルパツィ)という、カルパチア山脈から名づけたのがここの製品の一つだ。
昔トランシルヴァニア土産に弟にタバコを・・・と思って友人に「一番安くてきついやつは?」と聞いたところ、これを勧められた。早速日本で土産を渡したら、フィルターなしで相当きつかったそうだ。
タバコはあの有毒な煙を体内に入れると考えただけでも試してみる気がしないのだが、この工場の雰囲気とあのにおいは嫌いではない。タバコ工場といっても格調の高い屋敷のような門構え、そこには野ばらがはっていた。そして空気で運ばれてくるあのにおいも、有害なものというよりもハーブの一種のようなよい香りのような気がする。

さて、セントジュルジの町を散策した気分になっていただけただろうか?
何ということのない小さな町だが、私の旅行の経験からいっても必ずしも有名な町や国が印象に残るというものではない。意外に、何の予備知識もなくふらりと訪れた国、名前も知らない町や村、そんなところが忘れられない場所になることも少なくない。
もちろん旅をするその時の、自身の心の持ちよう、モチベーションが何より大切なのはいうまでもない。
だから、何気ないこの町の魅力に触れてみて欲しい。
この土地に住む人々の息づかいが少しでも伝われば、本望である。

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Theme:東欧
Genre:海外情報

comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニアの町|2008-06-10_05:28|page top

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