旦那とガーボルさん、不思議な組み合わせだがよく気が合うようだ。
知性あふれるガーボルさんの話は魅力的だし、
彼を通じて得るガーボル像というものに惹かれるものがあった。
他者にとって理解の難しい規制は多々あるが、
家族一丸となって仕事をして、共同で生活を営む。
その姿は、現代の人間が失った家族意識や人生に対する安心感がある。
先祖から受け継いだ衣装に身を包み、そして早くに家庭生活を築き上げる。
「彼と話していると、自分がガーボルに生まれなかったことが残念に思われるよ。」
そう旦那が口にしたほどだ。
ガーボルさんは若い頃、絵の才能があり、学校でも一番だった。
「その時、絵の学校に進めばよかったのかもしれないが、
誰も手助けしてくれなかった。」
そして、絵を専攻していた旦那にデッサンのことなどをしきりに尋ねていた。
芸術を愛する心をもつ、ガーボルさんは珍しい存在に違いない。
「君たちは、ラフィ・ラヨシュについて聞いたことがあるかね?」
ガーボルさんが一冊の本を手にこういった。
その人はガーボルさんの遠い親戚にあたるという。
家業のアルミ職人のかたわら、子供5人を養い、そして詩を書いた。
彼は酒をのみ、不健全な生活を送っていて、
いつか更生させてやりたいとガーボルさんは教会に誘ったこともあったそうだ。
入院生活中、しばらく酒をやめていた時期があり、
彼は見違えたように顔に血色を取り戻していた。
しかし、最後には若くで不幸な死を招いてしまった。
アドベント派のガーボルたちが一堂に会して、合同の礼拝を行う行事がある。
ガーボルさんはその詩人を招いて、
そのセレモニーのために詩を書くようにと頼んだ。
しかし、その詩人は詩を書いてこなかった。
そこでガーボルさんは、今すぐにでも書くようにと彼をうながした。
詩人は、何を思ったのか森の中へ入っていった。
「その時間は、たぶん10分足らずだっただろう。
その間に、彼はある詩を書き上げたんだ。」
ガーボルさんは、紙に書かれた手書きの詩を読み上げた。
それは、大地に埋もれた石がそこから開放されたいと願い、
やがて川が包み込み、そこから解き放つという内容だった。 詩人自らも、自分もその川のようでありたいという願いをこめて締めくくった。
ハンガリー人の詩人のある作品と同様のモチーフを使いながらも、
彼自身の言葉と昔話のような語り口で仕上げた逸品だ。
きっと彼は天才だったに違いない。
そして、彼自身、ガーボルという宿命を背負い、
自己の内面との矛盾に苦しみながら生涯を生きたに違いなかった。
Rafi Lajosについてのドキュメンタリー映画
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