FC2ブログ

トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

11 ≪│2018/12│≫ 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
comments(-)|trackback(-)|スポンサー広告|--------_--:--|page top

イースターのカロタセグ、手芸を訪ねる旅

2017年の春。その年は4月の終わりで、いつもより遅いイースター。

芽吹いたばかりの木々がすでに春の訪れを感じさせてくれた。

はじめての試みでお客さんを連れて、カロタセグへ手芸を学ぶ旅へと出かけた。


カロタセグの旅 (27)


はじめに目指すのは、上地方。

カロタセグの中でも最も古いままの姿で手仕事が残るところ。

半世紀以上も時がとまったかのような清潔の部屋では、

幾層にも積み上げられたベッドカバーに天井まで届くほど積み上げられた枕カバー、

家族の歴史を物語るセピア色の写真がいっぱいに飾られていた。

ご主人が箪笥の奥底から出してくれたものに、あっと驚きの声がもれる。

「ドゥランドレー。」


カロタセグの旅


花嫁のヴェールは、薄いネット地に色とりどりのウール糸で

たっぷりと刺繍がほどこされたもので、100年前の本でしか見ることができないと思っていた。

ハンガリーの紋章にチューリップ、バラで彩られたその衣装は、

女性の晴れ舞台にふさわしいものである。

何度となく足を運んだのに、ぽろりと古く価値あるものが出てくる所がカロタセグなのだ。


初日は、ドロンワーク刺繍を、

2日目はイーラーショシュ、

3日目にはビーズ刺繍、

4日日目にはセーク村のアウトライン刺繍を学ぶという手芸合宿。

それぞれの村に住む、エキスパートの村人たちを先生に依頼した。


白い糸で目を数えながらモチーフを作り、

さらに糸を引いて透かし模様をつくるドロンワーク刺繍。

ヨーロッパ全域に見られるテクニックだが、

カロタセグ地方では主にベッドカバーの裾に、美しい幾何学の花が刺繍されている。

ドロンワーク刺繍を研究する二人の若い女性に刺繍を習っていると、

それとなく「今夜の宿はどこ?」と尋ねられた。

私が行き先を告げると、「果たして、車で行けるのかしら?」と驚いた様子だった。

森の中に位置し、有名な作家が娘たちのために建てさせた別荘だった。

それも、コ-シュ・カーロイという20世紀ハンガリーを代表する建築家の作だったので、

私もかねて訪れてみたいと望んでいた。

詳しく聞いてみると、そこは原っぱの中を道のない道を進んで行かなければならないという。

確認の電話をしてみると、車でも可能だという返事だったので、出発することにした。


国道を曲がって、途中まではアスファルトの道がのどかな丘を切り分けて進んでいた。

やがて、アスファルトが途切れて、タイヤの跡が二筋ならんだだけの、

予想通り、道のない道が丘の先へと続いていた。

旦那の車の後に続いて、アップダウンの坂道が車を縦に横にと震わせる。

半分楽しみながらも、半分楽しめない自分がハンドルを握っている。

薄暗くなりかけた頃、道が森のはずれに差しかかり、

春の木々のトンネルを抜けて、おとぎ話さながらの美しい屋敷にたどり着いた。


カロタセグの旅 (25)


翌日の朝は、美しく晴れわたっていた。

春の美しい自然を見に行こうと、予定を変更してハイキングに出かけた。

芽生えたばかりの若葉がきらきらと輝き、

可憐な野生の花が色鮮やかに足元を彩っていた。

「あ、ヤドリキ。」誰かがいった。

日本では高価に取引されるヤドリキは、トランシルヴァニアの森では

当たり前のようにあちこちに見られる。

高い木の上に引っかかった大きなシャボン玉のような、緑の玉。

旦那が木に登って、いくつかを引きちぎった。


カロタセグの旅 (24)


先ほどから耳をそばだてていた旦那が「猟犬の声がする。」といった。

自然の厳しいトランシルヴァニアでは、

ヒツジの放牧にも猟犬が欠かせない。

そして、その忠実な家来は、敵を攻撃するように仕込まれている。

茂みに隠れて、じっとヒツジの群れが過ぎるのを待った。

スリリングな春の遠足も、今となってはいい思い出である。


カロタセグの旅 (26)


土曜日は、イーラーショシュを訪ねて下地方へと向かった。

アンナおばさんの家でイーラーショシュの手ほどきを受けたあと、

おばさんが管理する村の教会へと向かった。

前日が聖金曜日だったため、黒いタペストリーがそのままに、

喪に服した厳かな雰囲気を伝えている。

秘密の箱から、たくさんのタペストリーを出して見せてくれたあと、

アンナおばさんがオルガンを弾いてくれた。

こじんまりとした美しい教会の中に響き渡る、

温かく力強い音に目も耳も引き込まれていった。


カロタセグの旅 (21)


最大の見所は、復活祭の日曜日。

最も華やかな衣装をまとって礼拝に出かける村人たちを見ることだった。

残念なことに小雨に見舞われてしまったが、

びっしりと刺繍やビーズで埋め尽くされた若い女性たちの存在そのものが、

春を告げるかのようだった。


カロタセグの旅 (2)


カロタセグの旅 (4)


昼前に待ちかねたエルジおばさんが、門の外まで出迎えてくれた。

孫娘のような、たくさんの若い女の子たちに囲まれて、

嬉しそうなエルジおばさん。

刺繍とは違って、進みの早いビーズ刺繍に集中する参加者たち。

村で一番美しいカティおばあちゃんの部屋を見せたくて、

訪ねると、さみしがりのおばあさんが思わず涙を流す場面もあった。


カロタセグの旅 (6)


カロタセグといえば、音楽や舞踊も有名である。

ちょうど日曜の夜に、村でヒツジの祭りが催された。

冬の間、羊飼いが預かっていたヒツジの群れが村人たちに返される。

村人たちは羊を託した礼として、チーズを分けてもらう。

イースターは、クリスマスと並ぶキリスト教の行事であるとともに、

さまざまな民族の春の祭典でもある。

幸いにも、今年はメーラ村のヒツジ祭りと重なった。


「それは面白い習慣で、朝から晩までお祭りがあるのよ。」と受け入れ先のジュンジがいった。

冬の間、羊飼いが預かっていたヒツジの群れが村人たちに返される。

村人たちは羊を託した礼として、チーズを分けてもらう。

それを祝う儀式と、朝から晩まで大騒ぎをするというお祭りが催される。

夕方に祭り会場へ向かうと、ヤギのパプリカ煮込みの振る舞いやパーリンカ(アルコール度数50度以上ある蒸留酒)を片手に多くの人で賑わっていた。

しばらくして、ご主人のアルピおじさんを伴って、

カロタセグの衣装に着替えた日本人女性の一軍がやってくると、会場は大きく沸いた。


カロタセグの旅 (13)


カロタセグの旅 (14)


ダンスが始まったのは、電灯が灯ってから。

納屋の中は仮設のステージと化し、

楽団の演奏とともに、若者たちが順々に自分の舞を見せていく。

かつて冬の夜は、カロタセグの若い男女は足が棒になるまで踊ったという。

納屋の隅では、おじいさんおばあさんたちが、おしゃべりをしながら見物をしている。

「「髪結いのラジオ」と言ったものだよ。」とアルピおじさんは笑う。

髪を結った(既婚の)年寄りのおばあさんたちが若者を見ながら、

かつての若い頃を思い出し、噂話に花を咲かせていた様子をそう喩えたらしい。

 女性たちは輪になって目にもとまらぬ勢いで回りながら、かん高く掛け声をあげる。

やがて男女がペアになり、ぐるぐると舞いはじめると、小さな納屋は熱気でいっぱいになる。

ダンスが一息つくと、今度は歌がはじまった。

ヴァイオリンの情感あふれる音色に合わせて、男たちが酔いしれるように大声を張り上げる。

そこに、女性が入る隙間はなく、年配男の独壇場なのである。

ひとつの民謡が終わると、次に誰かが要望をいれて、

メドレーのように途切れなくとめどなく歌う。

ハンガリー民族の、熱くて、最も核の部分をのぞき見たような心地になった。


月曜日には、ハンガリー人独特の習慣がある。

それは、男性が女性のところへ行って、水をかけるというもので、

キリスト教以前の信仰の名残だと言われている。

女性はお礼に、男性に卵を渡して、焼き菓子や飲み物でおもてなしをする。

カロタセグ地方では、バラやチューリップなどの花を絵付した

イースターエッグを渡すところもある。

正装をした可愛い少年がやってきて、みんなに香水を振り掛けた後、

カロタセグのダンスを披露してくれた。


カロタセグの旅 (9)


カロタセグの旅 (10)


最後の目的地、クルージを横切ってセーク村へと向かった。

カロタセグとはまた違った魅力のセークは、小さな町のようだ。

エルジおばさんの家へ着くと、枠を使ったアウトラインステッチを体験した。

村ではほとんどの女性が働きに出てしまったのに、

エルジおばさんは刺繍や手織りで生計を立てる数少ないひとり。

おじさんと一緒に、機織り用の糸を巻く作業や、縦糸を巻き取る作業も見せてくれた。


カロタセグの旅 (17)


カロタセグの旅 (18)


カロタセグやセークの魅力を再発見し、

素晴らしい参加者の方々と笑い、刺繍を通じて、

現地の人々とともに過ごした数日感。

皆さんの心に生涯刻まれる旅となればいいと思う。


カロタセグの旅 (22)





 

スポンサーサイト
comments(2)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2017-12-05_20:46|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

No title
素敵な旅だった様子がよく解ります。 多くのワークショップもいいですね~。
参加したかったのは山々でしたが こちらもヤボ用で・・・。
日本の多くの女性たちが現地を訪れていろいろに触れるのは
大きな心の収穫になりますね。
Re: No title
霧のまちさん、旅というのは一期一会なのだなとつくづく思います。
その時のメンバーや季節、自分の心持ちなど
様々なものが作用して、たとえ同じ場所へ行ったとしても
まったく違ったものになると思います。
とくにはじめての環境の場合は、
第一印象が大切だと思います。
参加者の方々にとって、トランシルヴァニア、
カロタセグがまた訪れたい場所になることを願います。
あちこちの村で学んだ刺繍は、家に持ち帰って、
完成させることになっています。
刺繍をしながら、カロタセグを、おばあさんたちを思い出して欲しいです。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。