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トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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おばあちゃんの遺言

カロタセグの土地を踏んだのは、新年が明けてからだった。
一番の目的は、カティおばあちゃんの弔いのため。
死が近いことを感じたのか、
「見てごらん。ここの墓場はそれはきれいなのよ。」
「いつか私が死んだら、お墓に花をそえてちょうだい。」
生前にこう話しては涙した。

村を見下ろす高台の上に、ひっそりと広がる墓場。
家から煙が立ち上るのがよく見える。
高齢者にはきつい、この高い丘を登って、
おばあさんは生前、亡き息子やご主人さんを訪ねていたのだ。

おばあさんの孫娘イボヤの後をついていく。
「ここが父方の祖父母の墓で、
あれがおばあちゃんのお墓よ。
可哀そうに、もう寒い寒いということもないわね。」
鮮やかな緑と赤いカーネーションが目に飛び込んできた。
色のない寂しい風景の中で、ここにだけ生命が燃えているようだ。
ちいさなブーケをその色の渦のなかにそっと置いた。


bogar1_20180225143222af8.jpg バラと

バラと鳥に囲まれた最後の住まいは、
カティおばあちゃんの刺繍で作りあげた世界そのもの。
年末、ちょうどクリスマスの前におばちゃんは亡くなった。
学生たちと取り交わした約束事があり、
全てをすてて、ここまで来ることができなかった。
生きている間にもう一度会えなかったこと、
葬儀に立ち会うことができなかったことなど、
後悔ばかりが胸をついて出てくる。

  bogar2.jpg 

おばちゃんの最後をみとったのは、
嫁と孫娘のふたりに他ならなかった。
最後に会った10月には、弱っていた体が回復したかに思われた。
おばあちゃんは、起き上り、助けてもらって立ち上がったこともあった。
しかし、おばあちゃんの心が生を拒絶したのだと思う。
12月になり、いつか孫たちにこう語った。
私たちがやってきたら、いつでも温かく迎え入れてくれと。
それが、そのままおばちゃんの遺言となった。

村で滞在している間、
これまで交流のなかったバビおばあさん、
イボヤのふたりに夕食をごちそうになったり、
豚の解体でできた自家製のソーセージをもってきてもらったり、
世話を焼いてくれた。
「村にきたら、いつでも訪ねてね。」

ふたりの親切は、そのままカティおばあちゃんの優しさなのだった。
自分の家で泊めることができないから、
エルジおばあさんを紹介してくれ、その縁が今につづいている。
そして、自分の死後のことまで考え、
私たちの世話をしてくれている。
もはやカティおばあちゃんはいないのに、
その果てしない愛情に始終包まれていた。

カティおばあちゃんは、
相手が異国の人間だろうか、
誰であろうが構わず、人に愛を注ぐことができる人だった。
私は何をすることができるだろうか、
おばあちゃんの愛情に触れるたびに自身に問いつづけている。




















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comments(2)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2018-02-24_22:55|page top

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No title
長生きしたおばぁちゃんでしたね。
そうやって惜しい人が亡くなっていくんですね。
お墓の美しいこと。 日本の無機質な墓石がさみしいです。
いろんな国でお墓を見ましたが、今までで日本の墓が
一番暗くてさみし気です。 幽霊と直結してますからね・・・。
Re: No title
霧のまちさん、ありがとうございます。

日本でも今のおばあちゃん世代の方々は
たくましくて、愛情が深いですよね。
こういう方々がいなくなるのは、本当にさみしいです。

バラに小鳥のお墓は、まさにおばあさんにぴったりです。
天国をイメージするからか、明るいお墓が多いですね。

世界のさまざまなお墓をご覧になったのですね!
日本のお墓は昔から、あんなに無機質だったのでしょうか。
瀬戸内海の志々島に一度機会があれば行って見てください。
ここのお墓は鮮やかなブルーの屋根の下にあって、ユニークですよ。