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トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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モルドヴァのサマーキャンプ

長旅を経て、ちいさな村ラーブニクに着くと、
通称「ハンガリーの家」と呼ばれるチャーンゴー団体が運営する宿舎で夕食が待っていた。
大皿にはたっぷりとあたたかな食事がのっている。
私たちは遅くに申し込んだため、宿舎ではなく、
チャーンゴーの家庭にお世話になる。

朝食を食べて、10時になるとプログラムがはじまる。
子どもたちは、徒歩10分ほどにあるルーマニアの小学校へ向かう。
先生たちと一緒に、ダンスと歌のレッスン。
  moldova (15) 
日本人の父親を持つヴィリくん、チャーンゴーのパウリナと手をつないで
遠足感覚で学校へ通う子どもたち。
どうやら次男が最年少のようだ。

moldova (16) 
その間に、大人向けのフォークダンスか楽器の授業が開かれる。
モルドヴァのダンスは、輪になって踊るものが多い。
カルパチアから西は、カップルダンスが主なのだが、東へ向かうとダンスも変わる。
音楽も、抒情的なトランシルヴァニアのそれに対して、
モルドヴァは陽気でスピーディである。
笛、ヴァイオリン、コプザと呼ばれる中世起源のギターのような楽器の中から選べる。

やがて、チャーンゴーのおばあさんに民謡を学ぶ時間がきてから、昼ごはん。
午後になると、毎日違う村からチャーンゴーのグループが
歌やダンスのショーをしてくれる。

子どもたちは、その間、手仕事の時間。

moldova (13) 
学校の前には、3台の機織りが置かれていて、
チャーンゴーのおばさんたちが機織りを見せてくれる。

moldova (14) 
美しい帯や巻きスカート、タリスニャと呼ばれる肩掛けかばんは、
手織りで作られている。

moldova (11) 
クレージェ出身のチャーンゴーのおばさんが、刺繍を教えてくれた。
シェルベットと呼ばれる、婚約の印のハンカチは、見事な刺繍が添えられる。
男性はそれを帯の間に挟み、教会に出かけるので、
花嫁の刺繍の技は村中の目にさらされることになる。

moldova (3)

残念ながら、現在は手織り布は使われず、
市販の粗い目の布に、化繊布で刺繍がされるので、
図案が大きく引き伸ばされ、発色も人工的になってしまう。
刺繍をしていると、おばさんがチャーンゴーの民謡を口ずさみ、
笛の音色も重なって、何とも贅沢な時間になった。
 moldova (2)

朝から晩までモルドヴァの音楽に囲まれる、一週間。
木曜日は、バスで森へと遠足に出かけた。
昔では考えられなかったことだが、森の中にペンションとプールが建てられている。
子どもたちは大はしゃぎでプールに飛び込み、
大人たちはビールを片手におしゃべり、休憩をする。
近くの村から、チャーンゴーの女性たちがやってきた。

moldova (10) 
チャーンゴーのダンスを見ている内にふと気づいたことがある。
美しいブラウスの袖が斜めに重なり、後姿がなんと美しいのだろう。
その袖を見せるために、このように腕を交差させるダンスが生まれたのかもしれないし、
ダンスの見栄えをよくするために、刺繍の豪華な袖が生まれたのかもしれない。

moldova (5) 
夕食が終わると、楽団を呼んで、明け方までターンツハーズ(ダンスパーティ)が開かれた。
18年過ぎて、出会ったチャーンゴーのイメージは大きく変わっていた。
チャーンゴーの女性たちの陽気なパワーに圧倒されるとともに、
彼らの中でチャーンゴーのアイデンティティーに自信が芽生えているのを強く感じた。
「私は伝統の保持者よ。」と自信を持って、
手仕事、歌や踊りにいそしみ、私たち外部のものに教えてくれるのだ。
そして優秀なものはチャーンゴー団体に抜擢され、
社員として働いたり、ハンガリーや外国で開かれるイベントへも招待される。

不思議な再会も後を断たなかった。
主催者ののひとり、ロズィが声をかけてくれ、
いつかクレージェの村で日本について話をしたことを思い出させてくれた。
「ずっと弟といっしょにそれを覚えていて、
ひらがな、カタカナといってふざけていたわ。」
私すら忘れかけていた過去の出来事がよみがえった。

何日か後には、クルージの大学の民俗学部で一緒だったチャーンゴーの少年ダニエルが、
大人のおじさんになって目の前に現れた。
「日本人らしい顔の子どもたちを見かけたから、もしかしてと思ったんだ。」
今は故郷の村でハンガリー語の教師をしているという。

ちいさな次男をいつも気にかけてくれたパウリナ。
故郷の村に家族を残して、夏のキャンプで働いている。
「君は私のペアなのよ。」といつも一緒にダンスをしてくれた。


moldova (4) 

参加者や主催者が不思議な絆で結ばれた1週間。
最終日の夜には、お披露目会、ターンツハーズで幕を閉じた。
「来年もまた会いましょう。」
握手や抱擁を交わして、私たちはモルドヴァの地を離れていった。




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comments(4)|trackback(0)|その他の地方の村|2018-08-19_16:37|page top

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No title
ここにもまた華やかな刺繍のブラウスがありますね~。
そちらのブラウスのデザインは袖が非常に重要視されていますね。
おっしゃるように踊りの動きで映えるようにでしょうか。
前に日本で展示された細かな手仕事の服も息を呑むほどでした。
地域によって本当に様々なデザインや手法が生きていますね。
モルドヴァ地方
モルドヴァ地方には、チャーンゴー人という人達がいるんですね。 田舎っぽくて素敵です。

私も、マラムレシュのあと、レンタカーでカルパチア山脈を越え、Cîrlibaba,という村のペンションで1泊して、ブコヴィナ県に入り、フレスコ画で装飾された世界遺産モルドヴァの教会群を見に行きました。
教会群も良かったけれど、カルパチアを降りた村で見掛けた、絞った牛乳の缶を、家々の前に置き、それを荷馬車で集めに来る風景を見て、感動しました。
昔、絵本で見たことがあるような、童話の挿絵のようでした。

モルドヴァ地方には、もっともっと素朴な風景が広がっているのでしょうか、行きたくなりますョ。
Re: モルドヴァ地方
kiyaさま、ブコヴィナ地方にはまだ行ったことがありません。
修道院では宿泊もできるそうですね。
モルドヴァ地方はトランシルヴァニアから山を越えるだけなのに、
歴史的に国境があったせいか、遠く感じるんです。
ここにもハンガリー人の少数民族が住んでいて、
長い歴史の中でなんとか自分たちのルーツを守っています。
ルーマニア人はほとんどが正教に属していますが、
ここのハンガリー人はカトリック教を信じています。
時間が止まったような村でした。
外国人が興味惹かれる観光地ではないですが、素敵なところです。
Re: No title
霧のまちさん、
モルドヴァ地方の衣装は袖の刺繍に重みがあり、
織りのラップスカートに帯を締めるのが特徴です。
チャーンゴーの衣装は、ルーマニア人の影響が強く見られます。
踊りもトランシルヴァニアはカップルダンスが多いですが、
モルドヴァはサークルダンスです。
手を回して輪になるので、袖の刺繍の美しさが際立ちます。
衣装の中でも、もっともブラウスが古くからの形を守っていて、
刺繍が美しいのではないでしょうか。
いつか、ルーマニアのブラウスだけを集めて展示をしてみたいです。