FC2ブログ

トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

07 ≪│2019/08│≫ 09
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

黒い天使

次男の病気のことが分かり、まだ混乱の最中にいた頃、
「明日ブカレストへ行くから、家から荷物があったら届けてあげる。」とメッセージがきた。
そんなに急ぎでもないので、郵便でも送れないことはなかったのだが、
彼女の好意に甘えることにした。

その頃は病院の付き添いに姑がいてくれたため、
私は外のホテルに滞在していた。
日本から慌てて荷造りをしてきたため、
冬の寒さに備えた衣服がなかった。

木枯らしの吹く寒い晩秋、どんよりと厚い雲が空を覆っていた日、
病院に彼女が到着した。
いつものように黒い衣装に身を包んだ彼女は、
これからプロィエシュティでコンサートがあるという。
彼女の次女は、娘の幼稚園のクラスメイトである。
産まれて四ヶ月で、次女のアビは心臓の手術をしなければならなかった。
「その頃は、私はコンサートでドイツに行かなければならなくて、
一番辛い時期に、スターの役を演じなければならなかった。」
そうして手術後は、集中治療室で一日30分しか娘の姿を見ることができなかった。
「そんなときは、私は外を思い切り散歩したわ。」

私も同様に、午後の3時から8時までの
面会時間だけしか次男と会うことができなかった。
次男のそばにいる時は安心して笑顔でいられたが、
離れてホテルの部屋に一人でいるときは、
心細さで押しつぶされそうだった。

殺風景な待合室で、椅子にもかけずに彼女は話してくれた。
アビの主治医に先日会って、息子の手術を担当する医者について尋ねてくれたという。
「大丈夫。イリエスク先生は、この病院で一番のお医者さんで、
人間味あふれる人だとの評判だそうよ。」
彼女も、娘さんを良い医者の手に託すことにし、安心できたという。
医師としての評判はもちろん、いつも穏やかで人の心が解る主治医に恵まれた、
私も同じ心持ちだった。

私の衣服の詰まったリュックとともに、
袋いっぱいの差し入れを手渡してくれた。
思いの他、長話をしてしまったことに気がつき、
ふたりの娘さんは車の中で待たせていることがわかった。

別れ際、彼女の目に涙が浮かんだ。
私も同様に涙していた。
肩を抱きしめ、「あなたは強くならなくちゃ。」と言った。
「そうするわ。」と約束をした。
颯爽と病院の扉を開けて出て行く彼女の姿は、
黒い天使そのものだった。

ジャズシンガーのルイザ・ザンの歌声は、
強く、そして優しい。
彼女の人柄そのもの。

あれから3ヶ月。
次男の検査の前日、私は彼女のコンサートへ向かう。
どうしても今、彼女の歌声から力を得たいから。

big-band-radio-poster-1-560x793.jpg 











スポンサーサイト
comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2019-02-21_17:49|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント