FC2ブログ

トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

02 ≪│2020/03│≫ 04
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

トランシルヴァニアの謝肉祭(1)

2月も終わりに近づいたある週末、
私たちはアパーツァ村に来ていた。
ブルン村の謝肉祭の初めの部分を見てから、
近くの知人の宅を訪ねていた。
ご近所さんがやってきて、帰り際に
「今日の午後までここに残らないんですか。
2時から、謝肉祭があるみたいですよ。」といった。
すると、マルギットおばさんも驚いたように、
今日が謝肉祭の日だったんだと思いだしたようだった。

アパーツァとブルンは、川向かいに位置するので、
普通は謝肉祭が一度に開かれることはあまりないという。
というのも、謝肉祭の後には必ず村のパーティが開かれるのが決まりで、
近くの村からも人がやってくるからだ。
ただ、今年は諸事情によりアパーツァでは夜のパーティはなく、
謝肉祭だけが開かれるとのことだった。

例年よりは暖冬だったとはいえ、まだ2月。
一日中表にいると身も凍えるようになる。
謝肉祭の行列はどこから出発するのかと気をもんでいたら、
村の女性に声をかけられた。
花嫁の家が近くにあるから案内してくれるという。
「去年はうちの息子が花嫁だったのよ。」と誇らしげに
写真を見せてくれた。
「ちょっと待っていて。」と家に走ると、
謝肉祭の名物といえるドーナツを袋に詰めて手渡してくれた。
それはまだ、冷たい手の中であたたかかった。

花嫁の家に入ると、
軒先につるしたリースが目に飛び込んできた。
馬も美しく飾り付けられ、準備万端。


   apacai farsang (7)


「ちょうど新婚の夜が終わったところだよ。」と冗談めかしていうご主人。
着付けをすると聞いていたので中をのぞかせてもらうと、
すでに衣装に着替えたふたりが仲睦まじく並んでいた。


apacai farsang (8)


村のはずれの方ですでに行列がすでに集まっているという噂を耳にして、
通りを下っていくと、セーケイの少女と少年が晴れ晴れしく行進してくるところだった。

apacai farsang (11)


アパーツァはバルツァシャーグ地方のはずれに位置する。
厳密には、セーケイ地方に接するため、
衣装にもセーケイの影響が多くみられる。
嫁入り前の少女が装うパールタは、
まるで宝石箱をひっくり返したように
きらきらとした飾りがひしめいている。
男か女か判断するのが難しいほどの美少年。
その姿は気高く、貫禄すら感じさせる。


apaca.jpg


ドイツ系のザクセン人の影響をうけた街並みに
蹄鉄の音を響かせ、夢のように消えていった。


apacai farsang (12)


村はずれの一軒家の前に、
巨大な小屋を積んだ馬車が立っている。
昔はポルノ雑誌の切張りで、唖然としたのを覚えているが、
今はだいぶんマイルドになって
水着姿の女性の写真が貼ってある。
屋根の上にはススキの穂、コウノトリがとまっている。


apacai farsang (19)


こんなところにも村ならではのジョークとこだわりが感じられる。


apacai farsang (2)


馬車の後ろと上には、それぞれ二体ずつ人形を引いている。
ロメオとジュリエットの名前書かれた、
アパーツァの衣装をきたカップル。


apacai farsang (14)


大きく門が放たれた庭には、
羊毛で身を覆った少年たち、仮装をした人々に楽団が集っていた。
パーリンカやドーナツで前祝をしているところ。


apacai farsang (13)


手に小さなかばんをさげた少年たちは、
黒い正装をして、前には小花柄の愛らしいエプロンを結んでいる。


apacai farsang (15)


やっと、花嫁花婿が到着して、
ブラスバンドの音色とともに行列が歩みはじめる。
馬はスカーフで結ばれ、
花輪を首にかけて、ポップコーンの飾りが楽し気な雰囲気だ。


apacai farsang (18)


十字路につくと、村人たちが行列を食べ物や飲み物で迎える。
黒い正装の少年たちに、お金を渡す人も多くみられた。
小さな村が活気をとりもどす美しい場面である。




花嫁行列の最後にいるのは、クマと呼ばれる羊の毛をまとった少年たち。
鎖で体を縛られ、飛び跳ねながら、
カラカラと鉄の鈴の音を響かせ、もう突進していく。
予想のつかない動きを見せるクマの群れは、
祭りをいきいきと、面白ろおかしく味付けているのである。


apacai farsang (4)


実は、このアパーツァは深刻な過疎化、ジプシー化に悩まされる村でもある。
美しい古い民家の並ぶ通りは過去の繁栄を物語っているが、
村はずれには、巨大なジプシーの地区が広がっている。
高齢化の進む昔からの住民(ハンガリー人、ルーマニア人)と
子どもの多い新しい住民(ジプシー)の対比が目にも明らかだ。
恐ろしいもの見たさにジプシーの子供たちが通りからやってくると、
このクマたちが弾丸のように追いかけるのだった。


apacai farsang (5)


日ごろの恨みを晴らさんとばかりに追いかける少年たちの姿は、
屈託がなく、笑いを誘う。
陰湿でなく、明るい祭りの中で行われるため、
良い意味でのストレス発散になり、
祭りというものが、そこで暮らす住民にとって大切なものであるかがわかる。
またジプシーのいたずらっ子たちも、
幼心に怖いものを知り、彼らの行動の抑制にもなるのではないか。

小さな謝肉祭ではあったが、
予想以上に満足をして、アパーツァ村を出た。
次に目指すのは、この日二つ目のブルン村の謝肉祭。





スポンサーサイト



comments(0)|trackback(0)|バルツァシャーグの村|2020-03-19_18:17|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント