トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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トランシルヴァニアに家を建てる(5)

前の晩に、小さな部屋で火を焚いていたので
夜はそう寒く感じられなかった。

部屋で友人と4人でパチパチと音を立てるかまどの火を見ていると、
まるで冬がやってきたかのような感じだった。
バルニが言った。「もうあと一ヶ月もすると寒くなるね。」
私はえっと、耳を疑った。「8月の終わりになると、もう火を焚かなくちゃいけない。
9月から4月までの間ずっと。実質8ヶ月は冬と同じだよ。」
私は愕然とした。
一年の三分の二は冬だなんて・・・
ドボイは山の陰に位置するから、寒さが来るのが早いのだ。
朝食も、かまどの火でジャガイモの煮込みを暖める。
この部屋は「夏の台所」と呼ばれる、小さな造りの部屋である。
かまどでは、パンを乗せるとトーストになるので便利である。

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朝食のあとは、お仕事が始まる。
今日は、コンクリートを入れるための準備である。
土地の高さを正確に測って、印をつける。
そしてコンクリートを流したときの仕切りを作る作業だ。

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私はここでも用がないらしく、今日は子守と家事に専念するしかない。
洗い物をするために水をくみに井戸にいくと、
初めて見かけるおばあちゃんがいた。
息子を見ると喜んで、「まあ、いつから来ているの?私のところにも遊びにいらっしゃい。」と声をかけてもらった。

一通りの仕事が終わったので通りを眺めていると、ガチョウの集団が走ってやってきた。
その後ろには、ネコくらいの小さなこぶたたちがものすごい勢いで追いかけている。
ガチョウは足が短いので早くは走れないから、
必死の形相である。
なんともユーモラスな光景に、思わず噴出しそうになる。

驚いたのは、こぶたたちが意外にかけっこが得意なことである。
あの小さな体のどこにあのエネルギーがあるのだろう、と不思議なくらい。
小さなピンク色のお尻をふりふりは知るその姿は、
かわいらしい。

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さらに悪いことには、息子もガチョウを追いかけることに楽しみを見つけてしまった。

あっ、見つかった。
可哀相なガチョウたち・・
でもこうして走ることで、美味しいお肉になるのかもしれない。

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暇をもてあまして友人宅でお茶を飲んだりしていると、
昨日知り合った子供づれの女性が通りかかった。
ヴィクトリア、愛称ヴィキは息子と同じくらいの年頃だったので、
これは幸いと息子と一緒に遊ばせることにした。

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カタツムリを探したり、かくれんぼ、ボール遊び・・・
と一通り遊ぶとヴィキはおばあちゃんが恋しくなったらしい。
「家に帰る。」といって通りに出たかと思うと、お向かいさんの家に入っていってしまった。
向かいのヤーノシュおじさんが手招きをするので、
私たちも中にお邪魔した。

すると、ヴィキのおばあちゃんとアニコーおばさんが
コーヒーを飲みながらおしゃべりをしている最中だった。
私も中に加わった。

日本の話やこの村の話・・・
中でも面白かったのは、村のごみ問題である。

ちょうど友人宅の付近に、村の人たちがゴミを放棄するらしい。
何度掃除をしても同じ状態。
家庭のゴミは、家で燃やすのが基本であるが、
ここ最近はペットボトルや缶などの燃えないゴミが多いのは
世界中共通することである。

町ならば、ゴミ置き場があって収集車が拾ってくれるが、
村の場合にはお金を払わないとゴミを取りに来てはくれない。
ゴミのためにお金を払う、ということがまだ村では受け入れられていないのである。

おしゃべりをしたあとは、友人宅へ行ってお茶を飲んだ。
私が「この村に住む可愛いお年寄りと知り合いになりたい」というと、
「じゃあ、この村で一番古い家に一人暮らしをしているおばあちゃんの所へ行こう。」と応じてくれた。

友人宅のすぐ近所にある家にやってきた。
こんなところに家があったのか、と思うような森に面した静かな場所である。

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中に入ると、二人のおばあちゃんがおしゃべりをしていた。
一人は私たちが土地を買ったイロンカおばあちゃん、
もうひとりがこの家の主人のユリシュカおばあちゃんである。
今朝、井戸で出会ったおばあちゃんだ。

二人のおばあちゃんは、どちらとも一人暮らしで
こんな風にお互いのところへ通って寂しさを紛らわしているようだ。
私たちの訪問をとても喜んでくれた。

私が二人の写真を撮って見せると、キャッキャとまるで少女のようにおおはしゃぎ。
おそらく初めてデジカメを見たのだろう。
私が手品師でもあるかのように、喜んでくれた。

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陽気なおばあちゃんたちとのおしゃべりも弾み、バルニはすでに帰っていた。
「バルニちゃんはね、私のところにただ一人手伝いに来てくれる人よ。」とユリシュカおばあちゃん(右)。
食べ物や薬などを持ってきたり、焚き木をもってきたり・・・と生活を助けているようだ。
私は改めて、よくできた旦那の友人に感動した。

おばあちゃんはこの村で生まれて、
30年間ブラショフで仕事をしていたそうだ。
あのチャウセスク時代には、工場ではハンガリー系の上司が全てルーマニア人に変えられ、町にも労働者としてルーマニア人が移住してきたので、町の様子もすっかり変わってしまったらしい。
もともとブラショフは、ドイツ系の住民が作った町である。
トランシルヴァニアでは、80年代にドイツ系の住民をドイツに送還するという事件もあって、今ではほとんどいない。

イロンカおばあちゃん(左)は耳が遠いので、
なかなか話しに加われない。
それでも私と出会ったことを喜んでくれて、「うちにも遊びに来てちょうだいね。」と家に帰っていった。

私もそろそろ・・・と腰を上げかけたが、
おばあちゃんは来客がよほどうれしいらしく、引き止められてしまった。

おばあちゃんのお部屋にあった刺繍のタペストリー。
昔懐かしいスタイルの絵で、築200年というおばあちゃんのお部屋にぴったりである。

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昔は刺繍や織物を作っていたそうなので、
冬になったらここへ通って刺繍を教えてもらうように約束をした。
これで今年の冬の楽しみがひとつ増えた。

やがて旦那と息子が呼びにきたので、おいとまをした。
大分長い間、おしゃべりをしていたらしい。

夕食の準備を始める。
昨日のように火を焚いて、今日の夕食はハンガリー名物サロンナである。
これは、豚の皮付き脂身を燻製にしたものである。
ベーコンの脂身だけ・・といったところか。

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見るからに成人病のリスクが大きそうな食べ物・・・
こんなものを食べるようになるとは思ってもみなかった。
はじめは胃にもたれるが、食べだすとこの香ばしさがたまらなくなるのだ。

バーベキューのように、切れ目を入れた脂身を串刺しにして火にかざす。
すると、香ばしい香りと共に脂が滴り落ちてくる。
これをタイミングよく、パンに塗るのがまた難しい。
誤まって手に落ちようものなら、熱いのでやけどしそうだ。
焼けるのには時間がかかるから、はじめは脂を落としたパンばかりをかじっていなければならなかった。

典型的なセーケイ人であった旦那のおじいちゃんは、
いつも畑へ行く前にはこの脂身(生)とパンが朝食だったそうだ。
私はさすがに生はダメだが、焼いた香ばしい脂の味には大分慣れたと思う。
昼食がなかったので、2切れも食べてしまった。

重い夕食を食べた後、帰り支度。
近所の子供たちが馬車を操って、下へ降りていった。
こんな子供だけで乗って危なくないのか、と心配になる。

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私たちもバス停まで車で乗せていってもらう。
先ほどの馬車とすれ違うと、
子供たちが大人たちに囲まれて笑顔を見せていた。
きっと畑に仕事へでた両親を迎えに行ってきたのだろう。
こうした一家団欒の姿は村ならではの光景だ。
幸せそうな一家の姿が夕焼けの中でまぶしく見えた。

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comments(3)|trackback(0)|村に家を建てる|2008-07-15_04:32|page top

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こんにちは
私、メタボぎみです(^^)

トランシルバニアは夏が短いんですね。とくにドボイは。
ストーブをこの時期に見る事ないですからね~日本では。
ムシムシした暑さですよ。

子豚ちゃんって、すばしっこいようですね。子豚のレースなんていうものを
見たことがあります。

ヴィキちゃん可愛いです~~
ちっちゃい 
息子さんがとても
お兄ちゃんに見えますよ。

おばあちゃんのお家も可愛いですね。
私もお年寄りの昔の話なんかを聞くのが大好きなんです。おばあちゃん子でしたし。
私も刺繍を教えて頂きたい位です!

豚の皮付き脂身って、沖縄のミミガーのもっとジューシーなやつかな~と
想像してます。こってりしてる感じですね。
焚き火で焼くのもキャンプみたいで
面白そうですね♪

ゴミは日本でも大問題です。
全部土に返るようなゴミになればいいのですが。。。


スマイルさん、メタボぎみならサロンナは絶対オススメしません。
畑仕事をするならともかく、普通の都会生活をする人があんな食生活をしていたら、でっぷりくるはずです。

現にトランシルヴァニアの中年女性はかなり肥満率が多いようです。

CARINAさん、おばあちゃんっ子だったんですか?トランシルヴァニアのおばあちゃんも、ステキです。

年をとるって辛いことも多いでしょうが、明るく笑えるそんなおばあちゃんになりたいですね。

CARINAさんの分まで刺繍を勉強しますね。今年の冬の目標です。

自分の生活環境に愛着を持てば、きっとゴミは捨てないはずですが・・・
昔と違って今のゴミは土に帰りませんから。これさえなければ、トランシルヴァニアの村は最高に美しいのですが。