トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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トランシルヴァニアに家を建てる(7)

目覚めて、外を見ると真っ白の深い霧ばかり。
夏の真っただ中に、珍しい天気である。
「秋が来たようだ。」とダンナもつぶやく。
霧があるということは、天気はきっとよくなるに違いない。
そう思いながら、道中の空を眺めていた。

やがて、巨大な真綿のようなもので覆われていた空の合間に鮮やかな青が見え始めた。
今日も天気に恵まれそうだ。

ドボイにつくと、今日の主役であるセメント・マシーンに登場してもらう。
まだおろしたばかりなのでピカピカ。
工事現場でしか見たことのない、この不思議な機械。
家を自分たちで建てることの多いトランシルヴァニアでは、個人でも普通に所有している。
まるで、コインを投入して動くおもちゃのようだ。

eskuvo 042

あの40kgものセメント袋をまた運び込んで、この大きな口の中にスコップで放り入れる。
さらに水と砂利を中に入れる。
そしてスイッチを押すと、ぐるぐると中をかき混ぜてくれる。
しばらく待つと、ドロドロのコンクリートの出来上がり!

doboly.jpg

ここでも男性3人の中ですることはないと追い払われ、結局水運びをあてがわれた。
この周辺の家の者たちは、皆でひとつの井戸を使う。
私たちの土地からははす向かいなので近いが、ユリシュカおばあちゃんの家からはかなり距離がある。
一人暮らしのお年寄りにとって大変なことは言うまでもない。

巨大なモニュメントのような井戸は、てこの原理で動く。
とはいっても、バケツいっぱいはかなりの重さだから力仕事である。

eskuvo 054

まず空のバケツを、上に向かおうとする力に逆らいながら下に下ろす。
バケツに水をためたら、上に引き上げる。
これがかなりの重労働で、あの太い棒を下から上へと力いっぱい手繰り寄せないといけない。
そしてバケツが持ち上がったら、持ってきた空のバケツに水を注ぐ。
上への重力があるから、バケツは宇宙遊泳するかのように不安定で、的を定めて水を入れるのは難しい。

eskuvo 053

水が一杯になったら、空のバケツを元の井戸の中に戻す。
・・・が、この空のバケツがヘタするとするっと手から抜けて上へ上りかねない。
かなりの力が上へとかかっているようで、体ごと上へと持ち上げられるような感覚になる。
井戸にふたをしたら、今度は水いっぱいのバケツを両手で運んでいく。
このバケツの重いこと。
肩全体が真横にぴんと張って、硬くなる。
歯を食いしばるようにして、やっとのことで目的地にたどり着いた。

生まれてこの方、水というものは蛇口をひねれば出てくるものと思っていたが・・・・
初めて有り難味が分かったような気がした。

何度か井戸と土地の間を往復して、ご近所のおばさんと遭遇した。
私がやっとの思いで井戸から持ち上げるバケツを、おばさんは慣れた手つきでするすると持ち上げる。
笑顔までこぼれている。
さすがは村で育った人だ。
体も相当鍛えられているのだろう。

eskuvo 059

さて重労働をする私たちの傍ら、息子はというと・・・
やはりカタツムリ遊び。
今度は、木に登らされていた可哀相なカタツムリたち。

doboly2.jpg

eskuvo 045

私が疲れて、一休みしていると。
向いのイロンカおばあちゃんのところにいた、ジプシーの若夫婦が手招きをしている。
何かと思ったら、写真を撮って欲しいとのこと。
私はドボイの村人たちのカメラマンになったかのようだ。

eskuvo 075

イロンカおばあちゃんが中に来るように誘ったので、お邪魔する。
おばあちゃんは洋服にアイロンをかけていたが、手を休めて、私に見せるために刺しゅうのクロスなどを広げて見せてくれた。
お嬢さんが作ったという、大きな壁掛け。
ラッパを吹く天使たち。
「神様のご加護が、この家にありますように・・・」とある。

eskuvo 077

もうお昼が過ぎたので、食事の支度に取り掛かる。
村から持ってきたジャガイモをたっぷりと茹でて、下ごしらえ。
これをサラダ油であえるかして、すでにできているポークステーキを温めるだけ。
あとは、きゅうりのサラダにしよう。
などと考えていたら、お肉がどこにもない!

そうだ、袋に包んで車に乗せるばかりにして置いたのに、見事に忘れてしまった・・・・と青くなる。
現場では朝から作業をしてお腹をすかせた男性3人。どうしよう。

すると友人が「ヨーシュカおじさんのところへ行ったらいい。」と話すので、カゴとお財布を持ってドアをノックした。
中には、おばあちゃんが一人。
朝から労働をしている男性3人に食べさせるものがないので、卵を分けてもらうよう頼んだ。
お金を払いたいというと、「お金で分けるものはない。」とおばあちゃん。
きっと分けるほどはないのだ、とあきらめて帰ろうと思っていたら、「いくつ要るの?」と聞いてきた。
私が「3,4個。」というと、6個の卵を持ってきてくれた。

こんな風に物がなくて困っているときに、この6コの卵はとても有難かった。
かごに入れて、大切にして持ち帰ってジャガイモと一緒に焼いた。

昼食後、砂利の山を近くに作るよう頼まれたので、大きなスコップを手に作業した。
ただでさえ重さのあるスコップが、砂利をいっぱい乗せるとさらに重みが加わる。
それを前へ前へと放り投げる。
家を建てるという仕事の、ほんのわずかな部分でしか加勢できない。
だからこそ、できることは精一杯やりたいと思いながら、真上に照りつける太陽の光を感じながら山を積み上げる。
そして、バケツで水運び。
いつしか私の手の平もカサカサで硬くなり、小さな水ぶくれがひとつできていた。

やがてその日の作業も終わろうとしていた。
あれだけ深かった溝も、全て灰色のコンクリートで塞がっていた。

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明日も朝早くからの作業が待っているので、今日はドボイに泊まることにした。

日差しが西に傾き、太陽の光もオレンジを帯びてくると、村の通りも活気が出てくる。
ヨーシュカおじさんの羊たちは、プルーンの木にむかって一直線。
鈴なりになった黄色や赤の可愛い実を、美味しそうにほおばっている。

eskuvo 081

「こら、ジュジャ!そっちはダメ!」と言っているほうを見ると、丸々と太った羊。
穏やかな笑顔のおじいさんは、「この子は、どれだけお金を積まれたとしてもあげられない。」と話した。
いつか読んだ星の王子様の一説のように、おじさんにとってジュジャはただの羊ではない。特別な存在なのだ。
家畜というのは、ただ食べものを供給するものだけでなく、こんなにも人間と近い関係になれる。
そう思うと、見る目が不思議と変わってくる。

eskuvo 083

私たちは夕ご飯の買い物をしに、村のお店へ行った。
夕方の7時ごろ、お店は村人たちの溜まり場になる。
バルニは友人を見つけたらしく、お店の中でビールを開けて飲むことになった。
店の周りの庭でも、ビールを片手におしゃべりをするおじさんたちが見られる。
村には酒場がないので、それもかねているらしい。

eskuvo 099

男性の輪の中で話しに混ざるのも何だと思っていたら、近所に住む三つ編みのかわいいおばあちゃんがやってきた。

明日83歳のお誕生日を迎えるおばあちゃんは、まだまだ元気だ。
これから牛が放牧から帰ってくるので、新鮮な牛乳を買いに行くところだという。
私もお供をした。
おばあちゃんの乳絞りを見学して、家に帰った。

もう9時ごろは薄暗く、冷え冷えとしている。
私は、晩方の村の空気を満喫した後、眠りについた。









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comments(5)|trackback(0)|村に家を建てる|2008-08-09_06:06|page top

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大変だ~
カタツムリ、大変ですね~。それにしても日本ではお目にかかりづらくなった大きさですね。

こちらも濃霧の日は晴れる事が多いです。でも其れだけ朝晩が寒いという事ですが。

 家づくり、着々と進行中ですね。これからの作業状況が楽しみです。

 そうそう、昨日久しぶりに挽きにくき使いました。久しぶりにちゃんと写真におさめてサイトの日記へアップしました。
ぺりメニ見ました!ロシアの水餃子みたいなものなのですね。
あの栄養たっぷりの野菜スープに入ったら、本当に美味しそう・・・
越後屋さんのお住まいのシベリアがもっと近くなら、絶対にお料理を習いに行くのに・・・

私は、きのう友人の家でさばいたばかりのウサギ肉でハンガリー風肉じゃが(?)を作りました。ウサギのお肉も、癖がなくて美味しいですよね。
tulipanさん、お久しぶりです。
また、ブログのデザイン変わりましたね!
今回のはのどかな感じがトランシルバニアらしさが出ていて良いと思います!

ジプシーの若夫婦、ワイルドでかっこいいです。若夫婦ということは左側の方は女性なんですよね。一瞬、男性かと思ってしまいました(スミマセン)。女性も逞しいですね。

新しいお家も出来上がりが楽しみです!ほんとに一から作り上げるなんて大変だけど愛着が湧きそうですね。
 兎美味しいですよね、こちらでも意外にも手に入りやすい方なのでたまに使います。がオーブン料理ばかり。
 煮込むのも良いかもしれませんね。

 ペリメニは本来其れだけで食べるのがほとんどみたいで、野菜たっぷりにしたのは我が家の野菜摂取量を上げるため。薄味のスープだと汁に出た栄養も全部取れるかな?と思って。量も食べる事が出来るでしょう生のサラダより。
SAYAさん、お久しぶりです!
コメントありがとうございます。
本当にこのデザイン、まさにこのブログのイメージにぴったりですよね!
さすがにジプシーへの反応がお早いところは、さすがです。こちらご夫婦なので、もちろん女性です。本当にたくましそうな奥様です。お気持ち、よく分かります。

越後屋さん、勝手ながらリンクさせていただきました。ウサギはやはり、焼いたほうが美味しいらしいです。煮たら、ダンナにおこられました。
全てが心を込めた手作り料理で、素晴らしいHPですね。食は、生活を楽しむの基本ですね。
私も早く一人前の主婦になりたいです・・・