トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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トランシルヴァニアに家を建てる(8)

ドボイの朝は、やはり冷える。
これが8月とは、とても思えない寒さ・・・
朝食を食べて食器を洗ってから、やっと太陽の光が庭を照らし始める。

eskuvo 106

朝つゆを体いっぱいに浴びたお花も、やっと顔を出し始めた。
名前も知らない花だが、
夏にこの涼しげなブルーを見ると気持ちまで涼しくなるような気がして好きだ。
ただ今だけは、太陽の光が恋しい・・・。

eskuvo 107

朝はまだ仕事がないので、
もうひとつの土地を見に行くことにした。
ひとつ家をはさんだ向こう側にある。
中に入ると、鮮やかなグリーンが目に飛び込んでくる。
こちらは草刈をしなくても、いつもきれいに芝は整えられている。
そのわけは、この掃除やである。
私が入ってくると、突然上のほうから群が駆け下りてきた。

羊は人を怖がるのかと思ったが、もう私に慣れたということなのだろうか、
すぐそばによっても平気で草を食んでいる。
すぐ手を伸ばせば、あのフカフカの毛に触れるほどの距離にまでも行くことができる。
もの静かで、心穏やかなこの動物がだんだん好きになってきた。

juhok2.jpg

私のお気に入りのミシ君。
この立派な角がトレードマークだ。

eskuvo 113

しばらく建設現場で昨日のように水汲みをしていると、
すでに水がドラム缶一杯になったので、私はまた村をうろつくことにした。
村のはずれの墓地に挟まれた場所に、一人で住んでいるユリシュカおばあちゃんを訪ねる。
私の姿を見ると、喜んで迎えてくれた。
「あなたを待っていたのよ。」とおばあちゃん。

しばらく雨続きの為に村に来ることができなかったこと、
昨日は手伝いで忙しかったのでこれなかったことを話した。
しばらくお話をしていると、ちょうど手伝いに来ている近所の男性が中に入ってきた。
水を汲んだり焚き木を切ったりの仕事は、80歳を超えるおばあちゃんには大変な重労働だからだ。

この日の話題は、ドボイにすむ野生動物のこと。
この男性は、次から次に色々な動物の話をしてくれた。
森の王様クマは、毎年秋になると果物の木を目当てに村にやってくる。
それでも人が怖いらしく、夜にそっと忍び寄ってくるそうだ。
朝になってみて木の枝が折れていたり、時には木の幹ごと横倒しになったりと、その痕跡が見られるという。
ユリシュカおばあちゃんも、この家の窓からクマを見たそうだ。電気も通っていないこの家にたった一人、さぞ心細いことだろう。

他にも、キツネも出るそうだ。
キツネは、犬の様な大きさでそれは美しいそうだ。
ただ家畜を襲うという欠点があり、ユリシュカおばあちゃんの飼っていたニワトリも相当な被害を受けたという。それからはもう飼わなくなった。

すると「近所のピロシュカおばあちゃんが、キツネを家で養っていたそうだ。」と村の男性。
キツネたちを、馬やでひそかに飼っていたと話した。
自分の家の家畜は襲わないだろうが、他所にとっては迷惑な話だ。

今年の秋は、初めての実りを見ることができるという期待と同時に、森の動物たちという未知の存在の恐ろしさもある。特にクマに遭って半殺しになったやら、殺されたやらと話を聞くと・・・・

やがて男性が帰ると、おばあちゃんは手芸の好きな私のために作品を見せてくれた。
どれも若い頃に作ったという作品。

こちらは、家の壁に飾るタペストリー。
昔ながらのデザインに、気の利いたセリフを入れるのが面白い。
生地に模様プリントしたものを買って、刺しゅうを入れるそうだ。

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「 口で言うよりもすることのほうが難く、
  食べることよりも料理することのほうが難しい。 」

主婦の方なら、まさに同感と思うだろう。

eskuvo 120

同じくタペストリーだが、こりらはルーマニア語で「おはよう。」と書いてある。

こちらはトランシルヴァニア、カロタセグ地方の有名な刺しゅうイーラーショシュというテクニックだ。

himzes2.jpg

その名の通り、布に絵を描くようにして自由なデザインで刺しゅうがしてある。
世紀転換期には、あのエルジェーベト王妃(シシィ)をも夢中にさせたカロタセグの刺しゅうは、今やトランシルヴァニア中で見られるほどポピュラーになった。
幸運のシンボルである蹄鉄のなかに、チューリップが入っている。

ユリシュカおばあちゃんが大きく広げているのは、森の動物のタペストリー。
ここドボイにぴったり合う、図案である。
端のほうには猟師の姿も。

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こちらは織物。
昔はどの家にも機織機があって、冬の間はずっと女性の大切な仕事であった。
おばあちゃんの織物は、シンプルな白同士の組み合わせ。
リネンとケンデルといわれる荒い植物繊維で織られている。
この織り糸の太さとテクスチャーの違いが、柄をさらに際立たせているようだ。

eskuvo 124

・・・と写真撮影に夢中になっていると、長居をしてしまったらしい。
近所のお姉ちゃんに連れられて、息子が私を探しに来た。
相変わらず、年上の女の子と遊ぶのが好きなようだ。

eskuvo 123

そろそろ昼食の支度をする頃だ。
まず焚き木から火をおこすことから、料理は始まる。
何度も失敗したが、ようやくコツをつかんできた。
最初は細い枝の様なものに火をつけ、紙を下に入れてから、徐々に大きい木を入れていかないといけない。

昨日家に忘れてきたポークステーキを温め、ジャガイモとソーセージ、羊のチーズで層を作って焼く。
サラダも添える。
昨日の名誉挽回とばかりに、今日はボリュームたっぷりだ。

村で料理をするのは、普段とはまた違った感じである。
村では時間があるので、余計なことに気をとられないで料理に専念できる。
そしてやっぱり、ガスよりも炭で作ったほうが料理は美味しい。

eskuvo 133

食事の後は、息子を寝かせる。
男性たちの仕事もはかどっている様子。
今度はさらにコンクリートを上に上げるために、木の板で台を作る。
チェーンソーで板を切りそろえてから、釘で固定させる。

eskuvo 130

この後、ラツィおじさんが手に釘を打ってしまうというアクシデントがあった。
相当痛いらしく、指からは血が流れていた。

eskuvo 139

・・・が、ようやくコンクリート作業もこれで終わろうとしていた。
土地から40cmまでの高さにコンクリートは流し込まれ、土台は完成。
私たちの作業は、これがヤマだ。
後は、大工さんを呼んでの作業となるので、素人は余り出る幕がないそうだ。
家が建ってから、今度は内装作業が待っている。

また一日が終わろうとしている。
道ではガチョウたちが、息子の持ってきたボールで遊んでいた。
あの長いクチバシで「難だろう?」としきりにつついていた。

duks.jpg

これからしばらく、土台が安定するまでは仕事がない。
暑さでコンクリートが割れないように、たまに水をかけるだけだという。
ドボイの家作りも、ひとつの作業が終わった。

これが今年の秋までにできるかどうか・・・
まだまだ仕事は続く。

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comments(2)|trackback(0)|村に家を建てる|2008-08-15_07:30|page top

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重くて全部表示されてなかったけど、読み終えたところです。
家の基礎ができたんだね。
日本の家とは造りが違うと思うから、楽しみにしてるね。
家を建てるのは、やはり大工さんが必要なんだね。中国辺りは自分たちで全部建てるらしいから、てっきりそうだと思い込んでたら違ってました。
秋までに建て終わる予定なんだね。ブログからだけど、建て終わるの見守ってるね。
建て終わったら遊びに行きたいな。
なちゅさん、いつもありがとう☆
家ものんびりペースだから、いつになることか・・・それでも、なちゅさんたちが遊びに来るまでにはきっと完成しているはず。
私も自分の目で家が建つのを見るのが、楽しみです。実家の家は、まだ東京に住んでいるときに建てられたので、気がついたら家があったため、あまり自分たちの家という実感が起こりませんでした。
やっぱり自分で何か手を入れることって、大切だと思います。

家が建つのを、楽しみに待っててくださいね♪