トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ドボイで揺りかご作り

ダンナの高校時代の友人に子供が生まれた。
ちょうど、もう一人の高校の旧友の結婚式と同じ日であった。

ダンナは何を思ったのか、友人の出産祝いに揺りかごを作ろうと計画を始めた。
確かに今は、村で家を建ててくれることになっている大工さんが仕事で忙しいため、また作業が休止している状態である。
その友人というのは彫刻家なのだから、そんなプロに贈るなんて失礼じゃないか・・・と私は考えるのだが。

そういう訳で、私たちは揺りかご製作のためにドボイへ向かった。
もう一人の彫刻家、バルニと共同で作ってプレゼントするというわけだ。

村で生活を始めて4年になるという友人の家も、だんだんと村の生活らしくなってきた。
芸術家という職業上、村にばかりいるわけにいかないらしい。
この間行ったときに、トマトが植えてあるのを見て意外に思ったのを覚えている。
そして彫刻の庭では、私たちが来るのを歓迎するかのように一輪の紅色のバラが花開きはじめた。

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「ウサギを見に来る?」というので、私は息子の手を引っ張ってアトリエのほうへついていった。
ご主人様の仕事場を守るかのように、大きな犬が2匹も待ち構えている。
もう私たちにも慣れたようで、ほえないので安心だ。
アトリエの中にウサギ小屋がある。

子供の頃に好きだったベンジャミン・バニーを思わせるような灰色がかった茶色のウサギ。
立派な小屋を作ってもらって、心地よさ気に身を寄せ合っていた。
「あと一ヶ月で、子供が生まれるよ。」といいながら、ウサギを大切そうに抱き上げていた。

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やがて作業開始。
木の板を組み立てて、大体の大きさを決める。
「赤ちゃんって、どのくらいの大きさだっけ?」と首をひねる。
私も口を出しながら、ようやくサイズが決定した。

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大きさが決まると、今度は板の接続部分をで切る。
あの大きなチェーンソーが登場。
エンジンを入れると、ものすごい音を立てて高速回転する。
私は怖くて、よく見れたものでない。
それから、きれいにノミで形を整える。

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作業が段取りよくはかどる中、私は昼食の準備。
村から持ってきたトマトをふんだんに使ったパスタの予定だが・・・
暖炉でまきから焚いていると火加減が難しく、途中で何回も火が消えてしまった。
慣れていないので、料理をしている間に火のことをすっかり忘れてしまうのだ。
結局、パスタは茹ですぎのドロドロになってしまった。
ソースの味は悪くなかったので、食べられないことはなかったが・・

食後は、息子を寝かせている間に一人暮らしのユリシュカおばあちゃんを訪ねた。
お昼に茹でたとうもろこしを持って行った。
おばあちゃんはいつも、「あなたを待っていたのよ。」と喜んでくれる。
身のこなしも活発で、声も大きい元気なおばあちゃんだ。

おばあちゃんと世間話をしていると、お客様がやってきた。
初めて会うが、この村に住むおばあちゃん。
二人のおばあちゃんが、世間の悲しい話をため息混じりに語っているのを聞いていると、近所のお下げの可愛いおばあちゃんもやってきた。

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どうやらユリシュカおばあちゃんの家は、近所のおばあちゃんの溜まり場のようだ。
「あなた、誰のところへ来たの?」と初対面のおばあちゃんが聞くので、「バルニのところです。」と言うと、口々に彼のことをほめちぎる。
村において、「よそ者が誰を訪ねにきたか」というのはかなり重要なトピックのようだ。
だから、評判のいい人のところへ来た人はそれだけ待遇がよくなる。
おばあちゃんたちは、バルニから今度は私のこともほめだした。

おばあちゃんたちと午後の時間があっという間に過ぎて、家へ戻ると揺りかごも形が大分できていた。頭と足がくる部分に、きれいな形を描いているところだ。

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形を切り取った後は、歯医者さんの使うようなキィーンというイヤな音のする器具を使って、表面をきれいにこする。ヤスリでもゴシゴシとこする。

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「一度組み立ててみようか?」とダンナが提案。
そして木の板を組み合わせると、見事に揺りかごのような・・・

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しかしよく見ると、それは揺りかごというよりも別のものを髣髴とさせる。
「これ、ちょっと・・・」と私がいうと、「棺おけのようだって言いたいんでしょ。」とダンナ。
一同から苦笑がもれる。

それでも気にせずに作業は続行。
これまで、ぐっすりと眠っていた息子も目を覚ました。
もう日も暮れかかっていた。

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「バスの時間は?」と聞くと、もう時期で最終だという。
それでも作業の手は休まないので、今日はここで泊りが決定したようなもの。
やがて、ドボイの村も薄暗い光から夜の闇に変っていった。
それでも玄関の明かりの中、作業は黙々と続く。
・・・やがて完成。
その頃には、私と息子は暖炉でトーストしたパンに、トマトソースを塗った夜ご飯を済ませていた。

お茶を飲みながら、庭のベンチに座って夜空を見上げる。
まるで空に宝石が飛び散ったかのように、小さな輝きが黒い闇を満たしていた。
そのまたたきを眺めていると、音楽が聞こえてくるかのようだ。
・・・虫や木のざわめきと、星の音楽が一緒になって聴こえてくる。
なんて贅沢な時間だろう。
これは、お金では買うことのできないもののひとつ。

若くして、それをよく知っている友人は偉いと思う。
たった一人で、こんな静かな場所で生活する・・・私にはできるだろうか。

不意にガサガサという音がして、庭の犬たちが闇に向かってほえていた。
ダンナと友人が、門のそばで様子をじっとうかがっていた。
「あれは、クマに違いない。」と言われても、私は姿が見えないので実感はわかない。

人間を怖がるクマは、夜に行動をして果物を採るそうだ。
だからこんな時分は、誰も外を歩かないという。
・・・そう聞いて、ひっそりと静まり返ったこの村が怖く感じられた。

そんな風にして夜が開け、私たちは朝7時半のバスに間に合うように村を下りた。
だんなの腕には、昨晩できたばかりの大きな木の揺りかご。
朝の光が照らす中、門をくぐってあぜ道を歩いていった。

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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(3)|trackback(0)|アート|2008-08-31_07:06|page top

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うさぎの小屋、「ピーターラビットの絵本」を思わせるような素敵な小屋だね~。
うさぎの赤ちゃん、可愛いんだろうな~。
産まれるのが楽しみだね。
ブログ、いつも楽しく読んでます。
なかなかコメントを残せずにいたのですが、初めて「足跡」を残していきます。

ブログを読んでいると、前に1度だけ行ったルーマニアを思い出して、自然の雄大さを思い浮かべています。
暖かく、日が長い時期にまた行きたいな・・・。

私は短い夏休みを利用して、屋久島に行ってきました。
tulipanちゃんも行ってましたが、やっぱりすごく良いところですね!
実は3度目の上陸だったのですが、何度行ってもいいところでした。

また、tulipanちゃんのきれいな写真がアップされるのを楽しみにしています☆
嬉しいです♪
なちゅさん、
ウサギはこんな風に大きな家でのびのびと幸せそうだったよ!
うさぎの赤ちゃん、私も楽しみです。
また生まれたら写真を載せますね。

ゆりちゃん、
ありがとう!!
ルーマニアにあの寒い時期に行った思い出は
忘れられないね。
夏はまた全くの別世界です。
ぜひぜひ、また遊びに来てください☆

いいなあ、屋久島かあ。
私の大好きなおばあちゃんが住んでいて、思い出深いところです。
第2の故郷にしたいような、素敵なところ。
またいつか、行きたい・・