トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ヒツジ使いとの出会い

一番トランシルヴァニアらしい風景は何かと聞かれたら、私は迷わずヒツジ使いと羊の群れだと答えるだろう。そして背景に、あのなだらかな丘があったら言うことはない。
そんな風景は、ここセントジュルジの町のはずれにもある。

市民の憩いの場所である森の方角に、レゲルー(放牧をさせるところ)と呼ばれる小高い丘がある。
私のお気に入りの場所のひとつである。

以前そこで、一人の羊使いに出会った。
目の前にあるのは、青い空に緑の丘、そしてヒツジの薄茶色だけである。
静かに草をはむ音と、時折カラカラと低くなる鈴の音・・・
ゆっくりと遠ざかってゆく、そのフワフワの毛並を見ていると不思議と心が休まる。

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そんな風景に見とれていると、ふと遠くのほうに人の姿があることに気がついた。

sentgyorgy 004

その人物のほうへと近づいてゆく。
私は写真を撮りに来たことを告げた。
そして話してみて驚いた。
そのヒツジ使いはおじさんではなくて、女性。おばさんなのだ。

juhaszneni.jpg

頭は丸刈りで、服装はごく質素である。
もちろんお化粧などしていない。
肌は、一日中外にさらされるから、もちろん浅黒い。

「朝は日が昇る前から、そして夜は日が沈んだ後までずっとここにいるのよ。」と話す。
ヒツジ使いはもっとも過酷な職業のひとつ。
まさか女性まで、そんな仕事をしているとは・・・

「もちろん、私だって怖いと思うことはあるのよ。
一人っきりで、小屋で眠るときなんて、いつオオカミがやってくるかわからない。
それだけじゃなくて、今は物騒な世の中だから・・・。」

それは当然だろう。
ここは町の近くだから、それほど危険な動物にあうリスクは少ないかもしれない。
が現に、この近くでもクマやオオカミによる被害は起こっているのだから。

「昔から、こんな仕事をしていたわけじゃない。
 以前働いていた職場で、神経の病気にかかってしまって・・・
 もうこれ以上、働けなくなってしまったから。
 自然を相手にする、今の仕事を3年前から始めたの。」

町に住んでいた人が、一日中、ヒツジを相手に仕事をするなんて大変だろう。
ヒツジ使いは、肉体的な苦痛はもちろんのこと、精神的にも、ずっと一人でいるという孤独と闘わなければならないのだから。

「ヒツジの番なんて、簡単だろうって言うけれど。
 もしも、誰かが一日だけでも私の代わりを務めることができたなら、
 私は喜んでお給料を全部あげるわ。
 この前は40度近くの熱があったけれど、それでも朝早くおきて、ヒツジたちを小屋から出さなくてはならなかった。一日だって、休むことはできないのよ。」
 
一日も休むことなく、同じことを繰り返ししなければならない。
それがいかに大変なことか。
ただ空ばかり見てのんびり草に寝そべる・・・というナイーブなイメージとはうらはらに、実際は責任のある仕事なのだ。

「やっと、羊たちが私に慣れてくれた。
 ここまでくるのは、大変だったのよ。
 でも、もう今は誰が何と言おうとも、私はこの子たちを置いていったりはしない。」

そう話すヒツジ使いの表情は、女性や男性を超えた神々しいものに見えた。
女性としての道楽を一切捨て去り、動物の中で生活することを選んだ女性。
ご主人様はいるそうだが、なるで修道女のように私には見える。

ヒツジ使いは、よくイエス・キリストにたとえられる。
彼を頼って群がる信者が、羊たち。
だからヒツジ使いは、絶対にヒツジを置いて逃げてはならない。
ヒツジとヒツジ使いとの信頼によってのみ、この仕事が成り立つのだろう。

今、私がこうしている間、彼女は今どこにいるのだろう。
そう気になってならない。



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comments(2)|trackback(0)|文化、習慣|2008-09-10_07:13|page top

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自然が相手
 羊飼い、その牧歌的な印象とは裏腹に当然大変な仕事ですよね。
 農業もそうですが自然空いて、動物相手の仕事は自分の都合で変えられないのがとても大変だと思います。
 家庭菜園ていどでヒーヒー言っている我が家。本当に体が退化しているんだろうな~って思います。
 
 それにしてもこの羊飼いさんとっても素敵な表情です。自分の仕事に誇りを持っているのでしょうね。

 村では牛を飼っている方はいますが、皆さん自宅用の延長なのでのんびりしています。勿論大変な事には変わりないけど。
 凄いと思うのは、冬の薪準備から全てそうですが、厳しい環境で淡々と日々の生活を繰り返していく事がどれだけ凄い事か、牛乳屋の肝っ玉バーブシュカをみると感じます。
 都会には無い地に足の着いた生活ですね。
日々の生活
越後屋さん、
家庭菜園でも、何かを作り出すことは凄いことです。毎日ただ消費してばかりの生活ですが、その中で合理、非合理に関係なく作り出すことって大切ですよね。

<厳しい環境で淡々と日々の生活を繰り返していく事がどれだけ凄い事か

・・・本当におっしゃるとおりです。
雨の日も風の日も外でヒツジの番をしているあの女性にしろ、色々なことを教えてくれます。彼女のことを考えると、思わず背筋がしゃんとするような気持ちになります。