トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ブログ翻訳

6月の講習会のお知らせ

ルーマニア西部カロタセグ地方村々では、
古くから手仕事の文化が生活に根ざしてきました。
冬の農閑期がくると、女性たちは集まって糸を紡ぎ、刺繍をして長い夜をすごしました。

19世紀末にはヨーロッパ中を風靡した、
カットワーク、イーラーショシュのベッドカバーに枕カバー。
鮮やかな色と柄が織り成す民俗衣装。
現代では「清潔の部屋」と呼ばれる一室に大切に保管されています。
カロタセグ地方の伝統刺繍の世界を、現地で取材した写真とともにご紹介します。

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また、カロタセグを代表する刺繍、イーラーショシュも体験していただけます。
今回は、木の枝をくわえたクジャクとチューリップの花がオーバル型にデザインされた
ロングクロスをいっしょに作りましょう。

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「トランシルヴァニアの伝統手芸 イーラーショシュ体験」講習会

とき: 2016年6月18日(土)10:00~12:00

ところ: 朝日カルチャーセンター新宿校
 
詳しくはこちらまで。

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*おかげさまで満席になりました。
たくさんのお申し込みをどうもありがとうございます。
大阪NHKカルチャー梅田校にて
7/24(日)13:00~15:00に開催予定もございますので、次の募集をお待ちくださいませ。


*こちらの講座は定員を10人増やして、再募集しています。
詳しくはこちらまで。


*定員に近づきましたので、HP上のお申し込みは受け付けていないようですが、
まだわずかな人数を受け入れる可能性がございます。
お席の状況やキャンセル待ちについては
03-3344-1946までお問い合わせくださいませ。(4/18)
comments(8)|trackback(0)|その他|2016-03-18_17:22|page top

手作り季刊誌「te.」vol.54 Summer2015

灼熱の太陽が降り注ぐ中、
トランシルヴァニアの我が家に分厚い日本からの封書が届きました。

封を開けてみると、雑誌が数冊入っています。
涼しげなブルーの糸巻の絵がふわりふわりと舞う雑誌は、
関西の手織りと糸の店ておりやさんから発行される季刊誌「te.」 。
こちらに、この春の「イーラーショシュとビーズ刺繍」展の様子、
また私の活動に関する取材が紹介されました。

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te・ひと・作品のコーナーにて、
東欧・トランシルヴァニア 伝統の手仕事の扉を開けて というタイトルで、
4ページにわたる写真や取材がご覧いただけます。

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他にも、大槻能楽堂の能装束の特集も見ごたえありです。

「te.」は、こちらでお求め頂けます(定価380円)。

プロフィール紹介
本の購入

comments(0)|trackback(0)|その他|2015-07-20_20:58|page top

「世界の果ての日本人」

昨年の秋の終わり、
ここトランシルヴァニアで一週間の取材が行われた。
セーケイ地方の我が家で4日間、カロタセグ地方で2日間。
それは、世界の果てに住む日本人を訪ねるという趣旨の番組。

中でもディレクターの方が熱心に私の仕事のことや、
カロタセグ地方の手仕事にかかわることを尋ね、
それを伝えようという気持ちに感じ入った。
イーラーショシュとビーズ刺繍、
二つの大きな特徴ともいえる手仕事。

sekainohateno (1)

カロタセグ地方では3つの村を周り、
4人の素敵なおばあさんたちの家を訪問した。
美しい自然環境と人、
それがあの素晴らしい手仕事を生み出す土壌であることは常々から感じていた。
カロタセグの空気を少しでも届けることができるならば、
それが一番の成功だと信じている。

sekainohateno (2)

最後に、この番組に小さな奇跡が起こったことを書き加えたいと思う。
4つの地域の取材で編成される番組が、
関東ローカルでは全地域、全国放送では2つの地域だけが放映される運びとなる。
はじめの段階では、ルーマニアは全国版から漏れていたのに、
ここ最近になって変更となり、全国放送の枠に入ることになった。
たくさんの人に見て頂けることになり、嬉しい知らせだった。

TBS系番組「世界の果ての日本人13」

1)関東ローカル
   3月25日(水)21時~22時53分(インド、ルーマニア、タイ、ウガンダ)

2)全国ネット
   3月25日(水)21時56分~22時53分(インド、ルーマニア)


*HP「森の彼方-トランシルヴァニアへの扉」を制作して頂いた大前弘樹さまの
ブログ記事でご紹介いただいています。
sheepeacefulrest

*刺繍作家のモリンダさまが、こちらのブログ記事で番組終了後にご紹介くださいました。
Molinda UpaUpa
comments(16)|trackback(1)|その他|2015-03-15_06:46|page top

地中海の島へ

この旅の計画は、思わぬことからはじまった。
旅行会社から送られてきたダイレクトメールで、
シーズンオフの格安ツアーが偶然目に留まったのだ。
いくつかある海岸の町の中で、マルタ島というものにピンときた。
以前、旦那からマルタに石器時代の古代文明があったことを聞いていたからだ。

この鬱蒼とした灰色の風景から抜け出したい。
そう思ったのは、11年前ちょうど息子がお腹にいるときで、
新婚旅行としてチュニジアのツアーに参加するのを決めたのと同じ思いだった。
ひとつ新しいことを始めて、自分を変えてみたいという思いもあった。
そうして、結婚11年の記念と名をうって家族旅行をすることにした。

ヨーロッパ各地へ、ここ数年は格安飛行機が普及してきている。
「木製ベンチ」という異名をもつその飛行機は、
無料で運べる荷物が制限されていること、機内サービスが有料のこと、
頻繁に飛行機が遅延すること意外は申し分ないものだった。
ブカレストからマルタへ二時間半の飛行が、
日本円にして片道3000円程度で可能ということは驚くべきことだ。

私たちの乗った飛行機が、緑の草原と黄色い野の花のちらばる大地を踏むと、
機内からは一斉に拍手が巻き起こった。
パイロットは聞いているだろうか。
妊娠のせいか涙もろくなっている私は、旅の無事を喜び思わず涙した。
こうして、長い夢のような一週間が幕をあけた。

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表に出ると、生暖かく、肌に吸い付くような湿った空気が迎えてくれる。
空港前の椰子の木は、故郷宮崎の空港を思い起こさせる。
バスに揺られて1時間半、美しいマルタ独特の黄色い建築の群れに目を奪われながら、
小さな海岸町に着いた。

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アパートメント風のホテルは、
3人部屋でキッチンつきで一泊3000円わずか。
昼でも室内は暗く、窓の外は壁しか見えないけれど、
貧乏旅行の私たちにはちょうどいい。
昼食はスタンドのパンで済ませ、日々夕食は自炊をした。

一日目、ちょっと目を離した隙に、娘が海の浅瀬に落ちた。
ジャンバーの下は無事だったけれど、
靴もズボンもびしょびしょ。
いくらマルタとはいえ、冬は風が吹き肌寒い。
旦那がすぐに衣類を買いに走った。

初めて見る地中海の海は、青く澄んでいた。
海岸によって、その時の天候によって、深さによって色を変化させる。
海岸端を散歩していくと、

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息子が大喜びで、何かを見つけたようで駆けてくる。
赤く熟した、サボテンの実だ。
こちらは雑草のようにどこでも生えてくるらしい。
この実が、夜に悲劇を起こすとはまだ知る由もなかった。

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みずみずしい緑の草原にたどり着いた。
私の目をもっとも喜ばせたのは、他でもない緑だった。
あらゆる植物が枯れて、凍りついた世界に慣れたせいか、
何でもない風景でも感動させてくれる。

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それから田舎道をひたすら歩きつづける。
畑は、マルタの建物と同じ黄色い石垣で区切られている。
マルタ島の大きさはブダペストの町くらいというから、迷う心配はないだろう。
手にしているのは、バスの路線図だけ。

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やがて一雨振り、あわてて自動車道を探した。
庭で作業しているおじさんに、「首都行きのバス停は。」と尋ねると、
「俺ができるのは、マルティーズ(マルタ語)だけさ。」という返事。
英語が公共語で、最近は英語留学でも有名なマルタであるが、
地元の人たちはマルタ語のみ話している。
それは半分イタリア語、半分アラビア語のような不思議な言葉である。

都市のある東海岸は、
ぎゅうぎゅうに人口の密集した町の風景だけれど、
ひとたび町をでると荒々しい自然がそのままの姿で残っている。

ゴゾ島の東海岸。
荒々しい波で削られた海岸は、
大小の潮だまりが空の青をきらきらと反射している。
「アズ-レの窓」と呼んでいる。
足元の岩の下では、轟々と音をたてて波がぶつかり合い、
荒れ狂う海の恐ろしさを物語っている。

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まるで宇宙の惑星のような、小さな潮だまり。

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北海岸は、静かな砂浜が横たわっている。
はじめて見る赤茶色の土、透明な青い海、
そして岩の突き出た緑の丘には、小さな洞窟がある。
これこそ、ギリシャの古典文学オデュッセウスの舞台になったといわれる場所であるという。
「昔、チュニジアにいたときに、
誰かが海の向こうに小さな島があって、そこにオデュッセウスの舞台になった洞窟がある。」と話していたよ。
この海の向こうには、11年前に行ったチュニジアがある。

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極上の海を前にたまりかねて、旦那が衣類を脱ぎはじめた。
ついに腿まで海につかって、時折高くなる波に上着までぬらしてしまった。
太陽が翳るまで、しばし海遊びを楽しんでいた。

マルタ島の西海岸ほど、自然の猛々しさを感じない場所はない。
空港からわずかバスで15分ほどで、世界の果てのような絶壁が立ちふさがる。
今では居住区も少ないこの西海岸地帯に、
古代文明の足跡が残っているのは面白い。
まず青の洞窟と呼ばれる海食洞。
それから、数多くある中でもっとも美しいといわれるハジャール・イム巨石神殿がある。

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バスを降りて、海岸沿いを散策する。
地点から地点へと向かう、道のりがまた楽しい。
日中は太陽の光が初夏のように降り注ぐ。
汗ばんで、上着を脱いだ。

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石器時代の巨石神殿は、今から5000年以上も前に建てられたものだという。
古代人の祈りの場所であったと同時に、太陽の動きを観察し、
夏至や冬至を知るために使われたという説もある。
何千年もの間、人々の記憶から忘れ去られていた遺跡が
再び日の目を浴びるのは20世紀始めになってのことである。
現在は風雨からの保護のため、屋根がついている。

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樹一本生えていない不毛の土地で、可憐な花を咲かせる植物。

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マルタのシンボルにもなっている石の門を通して、
儀式に使用されたものか食卓のようなものがのぞき見える。
このような古代遺跡を前に鳥肌の立つような思いをするのは、
故意に作った(と見える)装飾を見るときである。
何千年と時を経た石には、
深々と穴が刻まれ、その入り口を他とは違う何かに見せていた。

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今のマルタの建物と同じ黄色に色づく巨石のそばで、
小さな石ころを拾った。
それは、もしかしたら何千年と同じ時代をともにした兄弟なのかもしれない。

最終日を前にして、つまらぬことで夫婦喧嘩。
ホテルに旦那を残して、子ども二人連れてバスに乗って海岸へ行く。
人ひとりいない海岸を歩いても、不安にならない治安のよさ。
美しい海と子どもたちの笑顔で、すぐに気分が晴れた。

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巨大ホテルの建つゴールデン・ビーチから丘ひとつ超えただけで、
誰もいない静かな砂浜にたどり着く。
息子はズボンを脱ぎ波と戯れ、娘は黄金色の砂と遊ぶ。
ただ波の音だけが響く、静かな時間。

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地図によると、丘のさらに向こうの方に砂浜があるらしい。
この風景の向こうには何があるのだろう。
紐にくくりつけた娘を抱いて、丘の上へと登ってみると、
荒々しく削られた崖があるだけ。

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今度は丘の上を通って、元の道へと引き返そう。
緑の映える小高い原っぱを歩くのは、ちょっとしたハイキング気分。

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丘の上から、最後に見る海岸。
その姿をしっかりと目に焼き付ける。
今は自然のまま美しい姿だが、時代とともにどう変わってしまうか分からない。

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最後の夜は、ラバトという王宮の街を散策した。
群青色の空の下、外灯で照らされた黄色い壁の色がなんとも見事だ。

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そのひっそりとした町の風景は、中世にタイムスリップさせてくれる。
夏の夜は、夕涼みに繰り出す人で往来はさぞにぎわうことだろう。
冷たい風の吹きぬける冬は、ただ静けさだけがある。

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こうしてのんびりと、それでも慌しい旅の日々が終わり、
再び空港に戻ってきた。
1時間遅れで到着する飛行機を待ちながら、
娘が引きちぎった荷物用のテープを息子が顔に貼り付けてやる。

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1週間に一度だけの運行便。
行きとほぼ同じ旅行客を乗せた飛行機が、
再びうっすらと白い雪のつもる大地に降りたとき、
行きの時よりもさらに大きな拍手が巻き起こった。
また涙ぐみながら、その拍手に同調し、
ルーマニア人の感情の素直さに感激したのだった。
comments(6)|trackback(0)|その他|2015-02-23_11:34|page top

2015年はじめの日

森のはずれの友人の家に、
3家族が集まってのささやかなパーティ。
去年と同じ部屋で迎える新年だった。

家の中は寒かった。
6畳部屋が二つあり、真ん中に小さな薪ストーブがある。
靴下を二枚重ねした上にフェルトのスリッパ、スキーズボンをはいているのに、
床下からとてつもない寒気が伝わってくる。
部屋の中なのに足は凍え、手はかじかむ。
何度も、火に当たりにストーブのそばへ通わなければならなかった。

ナースチャは、いつものように故郷のウドムルト料理のサラダを作っているところだ。
娘のカタがニンジンをすりおろす。
ガラスさらに、煮たジャガイモや赤ビーツ、ニンジンを幾層にも重ねて、
マヨネーズを薄く塗っていく。

キッチンと居間を兼ねた小さな部屋は、
時に楽器職人のミクロ―シュのアトリエとなる。
空間を余すことなく活かし、
美しい木彫りの細工や白樺の小物、自然療法の本などが並んでいる。

家族がテーブルを囲み、
所狭しとごちそうが並ぶのを見ているとすでに寒さを忘れていた。
大人も子どももその年最後の食事をゆっくり味わいながら、
ワイングラスで乾杯をして、時が過ぎるのを待つ。

新しい年がくるのが楽しみなのは、自分がまだ若いからだろうか。
年を取った人は、果たして新年が喜ばしいのか、
それとも年が過ぎるのが惜しまれるのか。

そういえば、昔話でこういうものがあった。
正月に年の神が現れ、すべての人に年を渡していく。
ある年寄りの夫婦がそれを恐れて逃げ、
どうにかして年をとらないようにとする。
結局は年の神に見つかり、年を重ねてしまうというものだった。

ロウソクに火をともし、テーブルにはカードゲームをひろげて時間を過ごす。
寝付けないのか、娘が何度も目を覚ました。
そうこうしている間に、新年が近づいた。
室内用の小さな花火に火をつけ、
シャンパンを抜いて乾杯をする。

オレンジ色の線香が、か細い銅線をほどばしる。
その輝きに魅せられながら、時の儚さが身に染みるようだった。
ぱっと火をまき散らし、やがて煙と燃えかすだけが残る。
人の一生も、きっと同じようなものかもしれない。

その夜、何度目かの娘の泣き声でゲームが中断となり、
皆が寝る支度をはじめた。
娘の横に寝そべった。
その手は氷のように冷たかった。
娘や友人の娘の泣き声が何度か、
眠る皆の上を飛び交った後、夜が明けた。

朝一番に目を覚ましたのは娘だった。
友達のロージャの名前を呼び、起こそうとするのを制して、
仕方なしに私もむっくりと体を起こした。

ぼんやりとした目に飛び込んできたのは、ガラスに映る「氷の華」。
氷点下10度以下の寒い日にだけ見られる、氷の模様だ。
勢いよく降り注ぐシャワーのような、
透明な鳥の羽根のような見事な模様の中に、
ふと一頭の馬が現れた。

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新年初めての画を収めようと、
カメラを撮りだして、テーブルを乗り越えて窓に近づこうとする。
いくつか写真を撮ったあと、
いざ元の場所に戻ろうと振り返ったとき・・。
ガシャンと華々しい音がはじけた。
おそるおそる目を落としてみると、二個のグラスが割れている。

テーブルの下で横になっていた、主人と奥さんがゆっくりと体を起こした。
ミクロ―シュが「それは、幸運のしるしだよ。
グラスが割れるのは、そういうことなんだ。」と穏やかな口ぶりで言う。
そしてまた、何でもなかったかのように横になった。

何度も謝りながら、優しい主人の心遣いに感謝した。
賢く、そして謙虚なミクロ―シュは、
奥さんの郷のはるかロシアのウドムルトの地でハンガリー語教師をしていた。
その時に、ウドムルトの各地をめぐり民俗音楽を収集していた。
やっと助成金を得て、今年はその成果をまとめて本を出版することになったという。

その日は、いつになく寒さが厳しかった。
氷点下30度近くになった朝、娘を連れてそりをしに外に出たものの
手袋の下で手がかじかみ、すぐに家に戻らなければならなかった。

皆でテーブルを囲み、朝食を取っていたとき、
誰かが「何てきれいな鳥。」とつぶやいた。
黄色い体の鳥が、代わる代わる
窓の外にかかった豚の脂身をつつきに飛んでくる。

ujev (2)

部屋は小さいけれど、家の中は寒いけれども、
温かく幸せな家族がここにいる。
新年は静かに、そして穏やかに明けた。



Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(9)|trackback(0)|その他|2015-01-03_22:44|page top